函館の人ものがたり

よっちゃんの話

BGM / Takao Kisugi / Slowmotion

 
よっちゃんに逢ったら   弓の話なんかするんで 訊いたら 半年も前から 千代台の弓道場に 週2回通ってい るという
    それで 少しは当るようになったのかい と訊くと  素人が何を云うかとばかりに
    得意になって如何に的に当らないかを語りだした それじゃ 俺たちの話と一緒で 何時でも 的はずれだ・・
さすが よっちゃん   期待にたがわぬ 腕前を発揮したのだ
    4月になると 上達したメンバーは 一般クラスにあがって弓道初級クラスには新入生が入って来た
    ご多分に洩れず もう若くない女性が多い   新入生が入ると 先生も張り切るらしく 熱心に指導するという
    何度か矢を射るうちに よっちゃんの隣の女性が見事に的を射抜いた 指導の先生は大喜びでほめたたえた
    次に 射るのはよっちゃんの番だ ここはイチバン  何としても当てたい・・  祈る思いで矢を放った
    今まで幾度となく 的を狙って来たが ほとんど 的に届かずに 地面に落ちたり 天井に近い壁に当たったりしたものだ
    ・・が 祈りは通じた   矢は見事に的を射抜いた  我らが愛すべき  よっちゃんが的中したのは 狙った的のお隣の的だった
研修旅行と称して   全国のパン屋さんのご主人たちが ヨーロッパを旅行しました その内の一人が よっちゃんです
    よっちゃんは 老舗のパン屋さんの おぼっちゃまだったのです
    ドイツのパン屋さんに立ち寄ったとき パン窯の前に とても長い食パンが焼きあがっていました
    長い食パンの理由をきいてみると 食パンを短かくすると 両端が多くできるからだという・・ 
    至極 当たり前の回答に 納得させられ
    次に  「焼きたてのパンの匂いは最高ですね」  と言うと この香りは ”焼きたてパンの香りスプレー” を使っているという
    そんなスプレーは日本にはないので 分けて欲しい と言うと  心よく応じて 各自が 必要な数を云うと
    一通り注文を聴き終えたとき  ドイツのパン屋さんが話しだした
    「人々が 眠りについている時から パン職人は仕事を始めます」   「夜が明けて人々が起きだす頃に パンは焼きあがります」
    「すると パンの神様が パン屋さんの周辺に おいしいパンの香りを スプレ−するのです」
    「香りに誘われて 人々は焼きたてのパンを買いに来ます」   「だから このスプレーは日本にもあります」
森 鴎外も   若き日に 医学を学ぶためにドイツに渡りました
    そして ドイツ人の踊り子と出逢い その後 日本へ帰国してから小説 「舞姫」 を書きました
    日本から 研修旅行に出掛けた パン屋さんたちは 目の前にある幸せを ドイツまで行って悟りました
    目の前にある幸せを 感じるセンサー が必要なら ドイツまで行って 手に入れてください
    今なら ユーロも安く 円高ですから 行ってみたら そのセンサーは きっと 見つかります
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函館かめらまん

2014/05/02